高尿酸血症とは、血液中の尿酸の濃度(尿酸値)が、7.0mg/dlを超えて高い状態が続くものです。この状態が続くと様々な症状が引き起こされますが、その代表的なものが「痛風」です。痛風は関節などに強い痛みや炎症が引き起こされるものです。
高尿酸血症は発症する方の男女比が9:1と、圧倒的に男性に多い病気です。これは女性ホルモンに腎臓から尿酸の排泄を促進する働きがあるためと考えられており、女性ホルモンの分泌が減少していく50歳以上では、傾向として男女差が少し縮まります。
高尿酸血症自体に自覚症状はほとんどありませんが、尿酸値が高い状態が続いていると、水に溶けにくい性質を持つ尿酸が次第に針状に結晶化して関節や臓器に沈着して、様々な障害を引き起こします。これは尿酸塩沈着症と呼ばれることもあります。
その代表的なものが「痛風」で、足の親指の付け根などの関節に沈着した尿酸塩を免疫が攻撃して炎症が起こり、激痛の症状が現れるものです。炎症が起こる部位としてはほかに足の甲、アキレス腱のつけ根、膝の関節、手の関節などが挙げられます。
さらに皮下組織などに尿酸塩結晶が溜まると、「痛風結節」と呼ばれるコブのようなものができる場合があります。痛風結節が現れやすい部位は足関節、肘関節、手指などですが、身体の様々な部位で起こり得ます。結節自体に痛みはなく、破れると白色でネバネバ状の中身が出てきます。
また尿酸塩結晶が尿路に溜まると尿路結石、腎臓に溜まると腎臓結石(痛風腎)となり、激痛を伴う発作が現れるとともに、繰り返し発症してしまうと腎機能の低下や腎不全を招く危険もあります。
尿酸とは「プリン体」を分解した際に産出される老廃物です。プリン体とは核酸を構成する主成分で、細胞の代謝や体を動かすエネルギーとして重要な物質です。このプリン体はほとんどの生物の細胞に存在するため、多くの食品に含まれていますが、食事によってプリン体を多く摂ってしまうと、血液中の尿酸値が高まってしまいます。
また尿酸は腎臓から尿によって排出されますが、何らかの理由で腎臓の排出機能が低下することでも、血液中の尿酸値は高まります。これらのどちらか、あるいは両方によって、高尿酸血症が発症します(このほか、腸管から排出される尿酸もあり、その排出が減少することでも高尿酸血症が起こることが分かっています)。
尿酸値を下げていくためには、まず食生活を改善し、プリン体を多く含む食品の摂り過ぎに注意することが重要です。プリン体を多く含む食品としては、鶏卵や魚卵、肉(特にレバー)、イワシやカツオなどの魚(干物、煮干し、鰹節も含む)、ジュースや清涼飲料水に含まれる果糖、ビールなどが挙げられます。
またアルコールは要注意で、摂取し過ぎると尿酸の産生量を増やし、排泄を阻害する働きがあるほか、利尿作用によって体内の水分量が減少し尿酸値が上昇しやすくなってしまいます。プリン体ゼロと謳われているピールなどもありますが、アルコール自体にこのような作用があるので、飲酒は控えめにしましょう。
このほかウォーキングや自転車、水泳など適度な有酸素運動を行う運動療法は、尿酸値を下げるためには有効です。ただし強度の高い運動、とくに無酸素運動は、逆に尿酸が溜まってしまうため、運動療法は医師と相談の上、行うようにしましょう。
生活習慣の改善では尿酸値が下がらず、痛風や尿管結石などを繰り返す場合は、尿酸降下薬を使用します。使用する薬としては、尿酸の生成を抑える薬、尿をアルカリ化する薬、尿酸の排泄を促す薬など大きく分けて3つの種類があり、患者さまの高尿酸血症の原因や症状に併せて処方していきます。
なお痛風発作が起きている患者さまでは、痛風の痛み、腫れ、その他の症状を引き起こす炎症を軽減する、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、コルヒチン、グルココルチコイド(ステロイド)といった薬による消炎鎮痛治療を先行して使用し、尿酸降下薬による治療は関節炎症状が落ち着いてから開始していくようにします。これは痛風発作時に尿酸降下薬を開始すると、痛風発作を誘発してしまうためです。